tsuyojijiの「ガン日和」

胃がん発見からおよそ1年になります。これまでの経過や日々の様子を書き連ねます。

「日々是好日」を積み重ねて人生を締めくくりたい!

 今週は、月・火と柏の癌研に通って治療。そして、今日もまた柏に来ています。昨日は、ちょうど通院の合間の休日でした。点滴の効果か、少し気力がアップしてきた感じだったこともあり、気分転換に映画『日々是好日』を観てきました。ご存知の方も多いかと思いますが、樹木希林さんの最後の出演映画でした。黒木 華さん演じる女性が、大学時代に、お茶の師匠の樹木さんの元へ通い始め、それから二十年、お茶を通して、というよりも師匠の樹木さんとの触れ合いを通して人生を重ねていく様子が、ごく普通の日常のちょっとした悲喜こもごもとともに、とても丁寧に描かれています。これこそが映画のタイトルの「日々是好日」なんだろうと思います。

 

 さて、ようやく自分の気持ちが落ち着き、気持ちの中を整理して客観的に今回のブログを書けるような気がしてきました。

 このように大げさな書き出しになってしまいました。それは、月曜のCT検査の結果、胃がんがさらに拡大していることが判明したことによります。画像を見る限り、ほとんど胃の中の食べ物の通り道がなくなっている状況でした。さすがに、これは自分でもショックでした。これまでオプジーボが効いて、いずれ癌が小さくなるという期待が大きかったからだと思います。私の胃がんは「マイクロサテライト不安定性」という特徴があり、オプジーボが効きやすい、と聞かされていたことも、その期待を増大させていたのも事実です。そのために、ブログを書くことも、「オカノ通信」というグループLINEを書くことも、すべて放棄したような状態でした。しかし、ようやく、その気持ちの整理がついてきたということです。

 前回も書きましたように、このブログは、一人のがん患者である私が、その時その時の状況によって、何を考えて、感じているかをできる限り客観的に書くことを信条としています。読んでくれるのは、主に教え子やごく親しい人たちだけですから、その人たちに余分な心配をかけないためには、本当はこのようなことは書かないほうがいいのかもしれません。そして、それほど遠くない将来に、このブログを書くこと自体出来なくなる日がおそらくやってきます。しかし、岡野健という一人のがん患者がどのようにがんと向き合おうとしているのかを書き記すことで、読んでくださる方々に何かを残せるのではないか、そんな思いで、書き続けようと思っています。

 

 さて、この2週間で、体重が一気に4キロ以上減りました。3週間前には52キロ前後あった体重が、昨日は47.2キロに。それまで体重計に乗るのは、むくみの取れ具合を見ることが目的でしたが、この3週間はどこまで痩せていくのかが気がかりで、体重計に恐る恐る乗っています。

 体育の日前後の3連休で腸の炎症がひどくなり、発熱が続いたことはすでに書きましたが、いったんその後体調が戻りつつありました。ところが先週中頃から胃に痛みが出てしまい、ほとんど食事をとれなくなってしまったのです。それで、急きょ主治医と連絡を取り、月曜日の受診となり、先ほど書いたCT検査の結果となりました。

 主治医の設楽先生のお話では、

 〇とにかく腸の状態を落ち着かせるまでは、次の治療はお休み。

 〇腸の落ち着き具合を見て、オプジーボを再開するか、抗がん剤に切り替えるか、胃の癌に放射線を当てるか、いずれかの方法を考えましょう。

 〇オプジーボをいったん休止して、放射線抗がん剤の治療を行って、治療効果を上げている人も結して少なくはありません。

とのこと。

 とにかく、目下食欲がわかないこともありますが、それ以上に食べようとしても胃が痛くなってしまうので、量を摂れません。今朝も味噌汁1杯と食パン4分の1枚が限度でした。

 

 この3、4日いろいろ考えました。この先どれだけの時間が自分にあるのかはわかりません。この後治療効果がぐんと上がって今の心配は杞憂に終わるのかもしれません。しかし、もうあまり過度の期待はしません。がん患者が徐々に死期に向かうのは避けられないのです。だとしたら、「自分は、この先(少なくもベッドに寝た切りなるまで)どのように生きるべきなのか」「どのように死を迎えればいいのか」少しじっくり考えてみたいと思っています。

 このように書くと、「オカノは生きるをあきらめたのか?」と心配する人も多いことでしょう。でも、決してそんなことはありません。「生きられる限りは、少しでも生きることにしがみつき、悪あがきでもなんでもしていくしぶとさは持ちたい」と思っています。幸いにも、私には大勢の教え子の応援団がバックに控えてくれています。そして、家族もその時その場の状況を見ながら、全面的に私を支えてくれています。これだけの大きな応援が大きなエネルギーとなって、私の中に流れ込んでくれているのを感じています。

 

 「日々是好日」の映画の中で、「人の人生は、突然何が起こるかわからない。だから、その日その日を一生懸命に生きるんだ」というような話題ができます。まさにその通りです。その日その日を、決して特別なものでなくても、ごく普通に生きて、晩御飯の時に家族が顔を合わせた時や、お風呂に入ったとき「ああ一日を送れたな」という毎日を積み重ねられたら、きっと安らかな最期を迎えられるのだと思います。

 家に帰ったら、「日々是好日」を毛筆で半紙か条幅に書きたくなってきました。